彼処は北向きの高台に拠っていて、比叡山や如意ヶ嶽や黒谷の塔や森や東山一帯の翠巒を一眸のうちに集め、見るからすが/\しい気持のする眺めであるが、それだけになお惜しい。
夏のゆうがた、折角山紫水明に対して爽快の気分に浸ろうと思い、楼に満つる涼風を慕って出かけてみると、白い天井の此処彼処に大きな乳白ガラスの蓋が篏め込んであって、ドギツイ明りが中でかっ/\と燃えている。
それが、近頃の洋館は天井が低いので、すぐ頭の上に火の玉がくるめいているようで、暑いことと云ったらない、体のうちでも天井に近い所ほど暑く、頭から襟頸から背筋へかけて炙られるように感じる。