夏のゆうがた、折角山紫水明に対して爽快の気分に浸ろうと思い、楼に満つる涼風を慕って出かけてみると、白い天井の此処彼処に大きな乳白ガラスの蓋が篏め込んであって、ドギツイ明りが中でかっ/\と燃えている。
それが、近頃の洋館は天井が低いので、すぐ頭の上に火の玉がくるめいているようで、暑いことと云ったらない、体のうちでも天井に近い所ほど暑く、頭から襟頸から背筋へかけて炙られるように感じる。
しかもその火の玉が一つあったらあれだけの廣さを照らすには十分なくらいであるのに、そう云う奴が三つも四つも天井に光っていて、その外にも小さな奴が壁に沿い柱に沿うて幾つとなく取り附けてあるのだが、そんなのはたゞ隅々に出来る隈を消している以外に、何の役にも立っていない。