前を通るとこんもりした邸内の植込みの青葉の隙から破風型の日本館の瓦が銀鼠色に輝き、其のうしろに西洋館の褪紅緋色の煉瓦がちら/\見えて、いかにも物持の住むらしい、奥床しい構えであった。
成る程其の日は何か内にお祭でもあるらしく、陽気な馬鹿囃しの太鼓の音が塀の外に洩れ、開け放された横町の裏木戸からは此の界隈に住む貧乏人の子供達が多勢ぞろ/\庭内に這入って行く。
私は表門の番人の部屋へ行って信一を呼んで貰おうかとも思ったが、何となく恐ろしい気がしたので、其の子供達と同じように裏木戸の潜りを抜けて構えの中へ這入った。