信一があまり真面目でやって居るので、掴まったらどんな事をされるかと、私は心から少し恐くなってにや/\不安な笑いを浮かべながら、其の実一生懸命俵の上や莚の蔭を逃げ廻った。
「おい仙吉、お前はもう足を喰われたから歩いちゃいけないよ」
狼はこう云って旅人の一人をお堂の隅へ追い詰め、体にとび上がって方々へ喰い付くと、仙吉は役者のするような苦悶の表情をして、眼をむき出すやら、口を歪めるやらいろ/\の身振りを巧みに演じて居たが、遂に喉笛を喰い切られて、キャッと知死期の悲鳴を最後に、手足の指をぶる/\とわなゝかせ、虚空を掴んでバッタリ倒れてしまった。