水のように湿んだ青い夜の空気に縁日のあかりが溶け込んで、金清楼の二階の座敷には乱舞の人影が手に取るように映って見え、米屋町の若い衆や二丁目の矢場の女や、いろ/\の男女が両側をぞろ/\往来して、今が一番人の出さかる刻限である。
中之橋を越えて、暗い淋しい浜町の通りからうしろを振り返って見ると、薄曇りのした黒い空が、ぼんやりと赤く濁染んでいる。
いつか私は塙の家の前に立って、山のように黒く聳えた高い甍を見上げていた。
水のように湿んだ青い夜の空気に縁日のあかりが溶け込んで、金清楼の二階の座敷には乱舞の人影が手に取るように映って見え、米屋町の若い衆や二丁目の矢場の女や、いろ/\の男女が両側をぞろ/\往来して、今が一番人の出さかる刻限である。
中之橋を越えて、暗い淋しい浜町の通りからうしろを振り返って見ると、薄曇りのした黒い空が、ぼんやりと赤く濁染んでいる。
いつか私は塙の家の前に立って、山のように黒く聳えた高い甍を見上げていた。