厚い金の額縁で、長方形に劃られた畫面の中に、重い暗い茶褐色の空気が漂うて、纔かに胸をお納戸色の衣に蔽い、裸体の儘の肩と腕とに金や珠玉の鐶を飾った下げ髪の女が、夢みるように黒眼がちの瞳をぱッちりと開いて前方を視つめて居る。
暗い中にもくッきりと鮮やかに浮き出て居る純白の肌の色、気高い鼻筋から唇、頤、両頬へかけて見事に神々しく整った、端厳な輪廓、―――これがお伽噺に出て来る天使と云うのであろうかと思いながら、私は暫くうっとりと見上げて居たが、ふと額から三尺ばかり下の壁に沿うた圓卓の上に、蛇の置物のあるのに気が付いて其の方へ眼を転じた。
此れは又何で拵えたものか、二た廻り程とぐろを巻いて蕨のように頭を擡げた姿勢と云い、ぬら/\した青大将の鱗の色と云い、如何にも真に迫った出来栄えである。