だん/\近づくに随い、ろくろ首の目鼻はあり/\と空中に描き出され、泣いて居るような、笑って居るような、眠って居るような、何とも云えぬ飄逸な表情に、見物人は又可笑しさに誘われます。
兎角するうち、舳が橋の蔭へ這入ると、首は水嵩の増した水面から、見物人の顔近くする/\と欄干に軽く擦れて、其のまゝ船に曳かれて折れかゞまり、橋桁の底をなよ/\と這って、今度は向う側の青空へ、ふわり、と浮かび上がりました。
駒形堂の前まで来ると、もう吾妻橋の通行人が遥かに此れを認めて、さながら凱旋の軍隊を歓迎するように待ち構えて居る様子が、船の中からもよく見えます。