真夏らしい日光がきらきらと、乾燥した、埃の多い京都の街の地面に反射し、晴れた空が毒々しく油切って、濃い藍色を湛えて居る日であった。
俥へ乗って停車場へ赴く途中、お召の単衣に絽の羽織を重ねて居る私は、髪の毛の長く伸びた揉み上げの辺から、べっとりした血のような汗が頬を流れ落ちて、襟の周囲へにじみ込むのを覚えた。
五条の橋から遥に愛宕山を望むと、恰も熔鉱炉の底から煽り上る熱気に似た陽炎が麓に打ち煙って、遠くの野や林はもやもやと霞に曇り、近い町々の甍や石垣や加茂川の水は、正視するに忍びない程、クッキリした、強い色彩に染られて、生々しいペンキ塗りの如く私の瞳孔を刺した。