脚気は阪神地方の風土病であるとも云うから、そんなせいかも知れないけれども、此処の家では主人夫婦を始め、ことし小学校の一年生である悦子までが、毎年夏から秋へかけて脚気に罹り罹りするので、ヴィタミンBの注射をするのが癖になってしまって、近頃では医者へ行く迄もなく、強力ベタキシンの注射薬を備えて置いて、家族が互に、何でもないようなことにも直ぐ注射し合った。
そして、少し体の調子が悪いと、ヴィタミンB欠乏のせいにしたが、誰が云い出したのかそのことを「B足らん」と名づけていた。
ピアノの音が止んだと見て、妙子は写真を抽出に戻して、階段の降り口まで出て行ったが、降りずにそこから階下を覗いて、