本家の兄は妙子が職業婦人めいて来ることには不賛成であったし、殊に部屋借りをするのはどうかと思ったのだけれども、この時も幸子が口をきいてやって、―――過去にちょっとした汚点を持つ妙子は、雪子以上に縁遠い訳であるから、何か一つ仕事を当てがっておく方がよいかも知れない、部屋借りと云っても仕事をしに行くだけで寝泊りをするのではない、幸い友達の未亡人が経営しているアパートがあるから、よく頼み込んでそこを借りることにしたらどうであろう、そこなら近い所だから自分も時々様子を見に行くことが出来る、と云うようなことを云って、やや事後承諾的に運んでしまったのであった。
元来が陽気な性質の妙子は、雪子とは反対に警句や冗談などを飛ばすと云った風であったのが、事件を引き起した当座は陰鬱になってしまい、変に考え込んでばかりいたが、そう云う新しい世界の開けたのが救いになって、近頃は以前の朗かさを取り返しつつあったので、その点では幸子の見通しが中った訳であった。
が、本家からは月々の小遣を貰ってい、その外に又作品が相当な値で売れるところから、自然金廻りがよくなって、時々びっくりするようなハンドバッグを提げていたり、舶来品らしい素敵な靴を穿いていたりした。