正直のところ、一度新聞にまで謳われてしまった間柄である以上、二人を一緒にさせるのが最良の道であることは分っていたし、本家の兄や姉達も結局は同じ考に落ち着くことと思っていたのであるが、ただ雪子の心理に及ぼす影響を慮って、出来ればその問題は先へ延ばして置きたかったのであった。
で、その日、奥畑を送り出したあとで、しょざいない時にはそうするのが癖の、ひとり応接間のピアノに向ってあれかこれかと譜本を引っぱり出しながら弾いているところへ、頃合を測って夙川から戻ったのであろう、妙子が何気ない顔をして這入って来たのを見ると、幸子はちょっと手を休めて、
「こいさん」