幸子は万事上方式に気が長い方なので、仮にも女の一生の大事をそう事務的に運ぼうと云うのは乱暴なと思いもしたけれども、井谷に臀を叩かれた形になって、行動の遅い彼女にしては珍しく、明くる日上本町へ出かけて行って姉にあらましの話をし、返事を急かされている事情などを打ち明けて云ってみたが、姉は又幸子に輪をかけた気の長さなので、そう云うことにはひとしお慎重で、悪くない話とは思うけれども一往夫にも相談してみて、よければ興信所に頼んで調べて貰い、その上でその人の郷里へも人を遣って、などと、なかなか暇が懸りそうなことを云うのであった。
で、本家がああ云うからにはとても一週間やそこらでは埒が明くまい、早くても一と月は懸ると見たので、何とかしてその間を引っ張って置く積りでいると、ちょうど約束の一週間が切れた昨日、又タキシーが家の前で停ったので、はっと思うと案の定井谷が這入って来た。
此方が慌てて、昨日又本家の方を急かしてみましたところ、大体異存がないらしいのですけれども、まだ調べの行き届かない点があるから、もう四五日待って戴きたいように云っていますので、と、言訳しかけるのを皆まで聞かずに、大体御異存がないのでしたら、細かい調べは後にして、兎に角本人さん同士会って御覧になったら如何でしょうか、見合いと云うような形式張ったことでなく、私が両方を晩の御飯にお招きすると云うことにしますから、御本家の方達はおいで下さらないでも、此方の御夫婦がお附添い下されば結構です、先方は非常にそれを望んでおられるのですが、と、退っ引きならぬように云った。