蘆屋の家の隣家、と云うよりは背中合せの庭つづきになっている家に、半年ほど前からシュトルツと云う独逸人の一家が移って来て住んでいた。
両家の庭の境界には目の粗い金網の垣が繞らしてあるだけだったので、悦子は直きにシュトルツ氏の子供たちと顔見知りになり、最初のうちは金網を隔てて、動物が互の臭を嗅ぎ合うように鼻を寄せつけて睨み合っていたが、間もなく双方から金網を越えて出入りし始めた。
独逸人の子は上がペータアと云う男の子、次がローゼマリーと云う女の子、下がフリッツと云う男の子で、一番兄のペータアが見たところ十か十一、ローゼマリーが悦子とちょうど同じぐらいの年恰好をしていたけれども、西洋の子供は大柄であるから、実際の歳はもう一つ二つ下であるらしかった。