そしてどうしても犬や猫のようには人情が添わず、人間とは全く関係のない、何かピクピクした奇妙な存在であると云う感じしか湧かなかった。
悦子が綴方に書いたのはこの兎のことなのであった。
雪子は毎朝、悦子を起して朝飯の世話をしてやり、鞄の中を調べた上で学校へ送り出してやってから、もう一度寝床へ這入って温まるのであるが、その日は晩秋の寒さが沁みる朝だったので、寝間着の上に羽二重のナイトガウンを羽織り、鞐も掛けずに足袋を穿いたまま玄関まで送って出ると、悦子がしきりに兎の一方の耳を持って立てようとしていた。