幸子はこう云う注意を受けるのは今度が始めてではなかった。
今迄にも雪子の見合いに立ち会ったことは数回あるが、「あの姉さんの方は陽気で近代的だけれども、妹さんは少し内気で陰性に見える」とか、「あの姉さんの若々しい明るい顔があたり一杯にひろがって見えて、妹さんの顔の印象が消されてしまう」とか、よくそう云われたことがあり、中には「本家の姉さんだけ立ち会うて下すって御分家の姉さんは遠慮して戴きたい」などと云い入れる者さえあった。
幸子はそれを云われる度に、そんなことを云う人は雪子ちゃんの顔のよさが分らないのだ、なるほど私の顔のように陽性で賑かなのが、近代的と云うものかも知れないけれども、こう云う顔は近頃の世間にはザラにあるので、珍しくも何ともない、自分の妹のことを褒めるのはおかしいけれども、ほんとうの昔の箱入娘、荒い風にも当らないで育ったと云う感じの、弱々しいが楚々とした美しさを持った顔と云えば、先ずうちの雪子ちゃんなどの顔ではあるまいか、あの美しさが分ってくれて、是非ともああ云う人がほしいと云うのでなければ私の妹は上げられない、と、雪子のために大いに弁じたものであったが、でも本心は、さすがに優越感を抑え難いところもあって、「あたしが一緒やったら雪子ちゃんの邪魔することになるねんて」と、夫の貞之助の前でだけは幾らか誇らしげに云ったりした。