それは一つには、彼女の性分として、誰かが手を取って無理に引っ張り出しでもしなければ、顔馴染のない皮膚科の医者の所へなど診て貰いに行くのは嫌なのであろう、が、一つには端の者が蔭で気を揉んでいるほど、当人はそのシミを神経に病んでいないのであった。
そう云えば、妙子がそんな忠告をした後の或る日、悦子が始めて気が付いたらしくて不思議そうに雪子の顔を見詰めながら、「あれ、姉ちゃん、眼の周りどないしたん」と、大きな声で聞いたことがあった。
生憎その場には幸子の外に女中達まで居合せたのが、俄にしーんと黙り込んでしまったが、その時も雪子は案外平気で、何か口の中でもぐもぐと胡麻化した返事をしただけで、顔色一つ変えるではなかった。