姉妹たちにして見れば、雪子は今が結婚前の大切な売り物で、見合いでなくとも着飾って外へ出かければ何処で誰に見られるか分らないのであるから、その前後の一週間ぐらいはなるべく引き籠っていてくれるか、でなければ、出かけるなら出かけるで、化粧でそれを目立たせないように工夫してくれたらよいのに、当人はそう云う点に一向無頓着なのであった。
幸子や妙子の見るところでは、雪子の顔は本来厚化粧の似合う顔だけれども、その翳りが現れている期間は、お白粉を濃くすると、斜めに光線を透かした時に、却って真っ白な地肌の下に鉛色の部分がくっきり沈澱して見えるので、寧ろその期間はお白粉を薄くして、頬紅を濃く着けた方がよいように思えた。
ところが雪子は平素から頬紅を着けるのが嫌いなので、(彼女が肺病などありはしないかと疑われたのも、一つはそう云う青白い化粧のせいなのであるが、妙子は又反対に、お白粉を着けないでも頬紅だけは必ず着けた)相変らず厚化粧をして外出する。