幸子にしても、雪子の顔にそれが週期的に現れる時期は、前から日を数えて予測することが出来るのであるから、見合いの日取をそう云う期間にきめなくともよかった訳であるが、井谷にせつかれたことが一つと、それから、そこに聊か油断があったと云うのは、あの日あたりなら幾らか消えずに残っていたとしても、人目につく程のことはあるまい、と、たかを括っていたのでもあった。
幸子は今朝、夫が事務所へ出て行ったあとで、雪子にそっと昨日の感想を尋ねて見て、大体義兄達や姉達の指図に任せると云う意向を聴き取ったところだったので、折角好い方に向いて来た話を、下手に切り出してこじれさせてはと案じながら、その夜悦子が寝てしまってから、貞之助にも遠慮して貰って、レントゲンの件と、皮膚科の件とを持ち出して見ると、思いの外あっさり承知して、中姉ちゃんが附いて来てくれるなら診て貰いに行ってもよい、と云うことになった。
が、そう云ううちに、一日々々と眼の縁の翳りが薄くなって、消えかかって来たので、同じ診て貰うなら次の廻りまで待って、もっとはっきり現れている時の方が、と、幸子は思ったのであるが、井谷の計略が図に中って、今度は貞之助が一日も早くと急き立てるので、明くる日、見合いの報告と身許調べの催促とを兼ねて上本町の本家へ行き、雪子を阪大へ連れて行くことを一往姉に答えて置いてから、その又明くる日、ちょっと雪子ちゃんと三越まで、と、わざと女中達にそう云って出かけた。