注射で直ると云うことを聞きましたのでございますが、と云うと、ええ、注射でも直るには直りますが、あの程度なら分りゃしないじゃありませんか、それより早く結婚させて上げるんですな、それが一番あれを直す良い方法ですよ、と云った風なことで終ってしまったと云う訳で、結局雑誌で読んだことが本当らしいのであった。
「そしたら、お前、これ井谷さん所へ持って行ってくれるか」―――貞之助はそう云ったが、持って行ってもよいけれども、先方が、御主人の方が話が早いと云ってあなたを目指して来たのだから、これもあなたから届けてほしい、別に除け者にされたことで気を悪くしているのではないが、実のところ、私はあんな風にセカセカされたのでは話がしにくい、と幸子が云うので、ナニ、それなら訳はない、此方も事務的に運ぶことにしようと、貞之助は明くる日事務所から電話であらまし話して置いて、写真と報告書とを速達書留で井谷へ送った。
と、その明くる日の午後四時頃、今から一時間ばかりしたらお伺い致しますと云う電話があって、きっちり五時に井谷が又事務所へ現れた。