それから、自分は婦人関係について過去に何の引っ懸りもないけれども、一つお耳に入れて置きたいことがあると云って、意外な事を洩らしたのは、―――巴里時代に百貨店の売り児をしていた或る仏蘭西の婦人と云い交したことがあったと云うこと。
そして、委しい話はしなかったけれども、結局その婦人に欺かれたらしいので、彼がホームシックに罹ったのも、純日本趣味に憧れるようになったのも、その反動であると云うこと。
―――瀬越はこの話を知っているのは旧友の房次郎君だけで、それ以外に話すのは今日が始めてであると云い、但しその婦人とは清い交際で終ったのであるから、その点は信用して戴きたいと云ったこと。