―――瀬越はこの話を知っているのは旧友の房次郎君だけで、それ以外に話すのは今日が始めてであると云い、但しその婦人とは清い交際で終ったのであるから、その点は信用して戴きたいと云ったこと。
―――幸子が雪子から聞き得たのは大体そんな事柄であったが、そこまで雪子に打ち明けて懸っている瀬越の心持は、問う迄もなく分っていることであった。
井谷からは、直ぐ追っかけて翌日貞之助に電話があり、昨日十分な機会を与えて下すったので、瀬越さんはもう何も云うところはない、お顔のシミのことも仰っしゃる通り問題にする程のものでないことが昨日でよく分った、この上は自分があのお嬢さんの夫として及第するかどうか、御返事の来るのを待つばかりである、と云う先方の言葉を伝えると同時に、まだ御本家の方のお調べは済まないのでしょうか、と云う催促であった。