―――幸子が雪子から聞き得たのは大体そんな事柄であったが、そこまで雪子に打ち明けて懸っている瀬越の心持は、問う迄もなく分っていることであった。
井谷からは、直ぐ追っかけて翌日貞之助に電話があり、昨日十分な機会を与えて下すったので、瀬越さんはもう何も云うところはない、お顔のシミのことも仰っしゃる通り問題にする程のものでないことが昨日でよく分った、この上は自分があのお嬢さんの夫として及第するかどうか、御返事の来るのを待つばかりである、と云う先方の言葉を伝えると同時に、まだ御本家の方のお調べは済まないのでしょうか、と云う催促であった。
井谷にして見れば、最初にこの話があってから既に一箇月以上にもなるのだし、先日蘆屋を訪ねた時にも、その数日後オリエンタルホテルの見合いの時にも、「あと一週間ぐらいお待ち願えれば」と云う挨拶を聞かされているのであるから、好い加減痺れを切らすのも尤もなのであるが、事実は幸子が始めて本家へこの事件で相談に行ったのがやっと十日か半月程前のことなので、それでなくてもこう云う調査には大事を取りたがる本家が、そう早速に返事をする筈はないのであった。