今となってはもう瀬越にはどう思われても已むを得ないとして、井谷にだけは、これから後のこともあるので、悪い感情を持たれたくない。
考えてみると今度のことでは井谷も随分時間や労力を費している訳で、この間じゅう蘆屋の宅や大阪の事務所へ足を運んだ回数だけでも少くはない。
美容院の経営には大勢弟子を使っているものの、なかなか繁昌しているらしいのに、その間を抜けてああ云う風に小まめに奔走すると云うのは、確かに噂のように世話好きなのであろうけれども、一通りの親切や侠気では出来ないことで、細かいことを云えば円タクその他の足賃にしても相当遣っているであろう。