美容院の経営には大勢弟子を使っているものの、なかなか繁昌しているらしいのに、その間を抜けてああ云う風に小まめに奔走すると云うのは、確かに噂のように世話好きなのであろうけれども、一通りの親切や侠気では出来ないことで、細かいことを云えば円タクその他の足賃にしても相当遣っているであろう。
貞之助は先夜オリエンタルの会の時に、名義は井谷の招待と云うことだけれども、実際の費用は瀬越側と自分達とで分担すべきものと思って、帰りがけにそのことを申し出たのであったが、井谷は、いえ、これは私がお招きしたのですからと云って、何としても応じなかった。
しかしどうせこの縁が纏まる迄にはまだ何か彼か橋渡しとして骨を折って貰うであろうし、いずれ引っくるめて礼をする機会があろうと考えて、あの時はそのままにして置いたのであったが、今となってはそれも放って置く訳には行かなかった。