先方さんへは寔にお気の毒ですけれども、何とか私から巧い工合に申しますから、その点は御心配なく、………」
貞之助は相手の如才ない言葉にほっとして、用談を終えると怱々に辞したが、井谷は玄関へ送って出ながらも、気を悪くしているどころではない、自分こそ済まないと思っていると繰り返して云った。
そして、きっとこの埋め合せに良い話を持って行くから待っていて戴きたい、なあに、そんなにお案じなさらないでも、あのお嬢さんなら必ずお引き請けしますから、何卒奥様にもそう仰っしゃって下さるようにと、頻りに云うのが、日頃の井谷の気象として、満更口先ばかりのようにも受け取れないので、この様子では事実そんなに感情を害してもいないのかと思えた。