彼女は本家が妹たちを大阪へ呼び寄せたがっていることを知っているので、決して手元へ引き留めるつもりはないのだけれども、雪子以上に本家へ行くことを嫌う妙子が、例年になく早く帰ると云い出したのを、何がなし不思議に思ったのであったが、そう云ってもそれは、奥畑との間に何か約束でもしているのではないかと云った風な人の悪い疑念ではなしに、ただこの早熟な末の妹が、一年々々とほんとうの大人になりつつあり、誰よりも一番頼りにしていた自分の側をさえ離れて行きつつあるような、一種の淡い物足らなさを覚えたまでのことなのであった。
「うち、やっと仕事が済んだよってに、大阪へ帰って、当分毎日舞の稽古に通おう思うてるねん」
と、妙子は弁解とも付かずに云った。