蘆屋に家を持ってからは、大阪にいた時のようには年始の客も来ず、まして二人の妹たちまで留守になるので、近年は正月と云うと、ひっそりとした、間の抜けたような日を送ることになっているのが、夫婦の者にはたまにしんみりしてよかったけれども、悦子はひどく淋しがって、「姉ちゃん」や「こいちゃん」の帰って来るのを待ちあぐんだ。
幸子は元日の午過ぎから三味線を持ち出して、爪弾きで「万歳」のおさらいをして、三箇日の間ずっと続けたが、しまいには悦子も聞き覚えて、「緋紗綾緋縮緬、………」のところへ来ると、
「とんとんちりめん、とんちりめん」