貞之助と幸子とは、その「ごぜえます」を聞いて妙子を見ると可笑しくなるので、なるべく妙子と眼を見合わさないようにしたが、妙子があらぬ方を向いて一生懸命に取り澄ましている顔つきが、又可笑しくてならなかった。
が、「お婆ちゃん」とは云うけれども、西洋の老婦人に多い肥満型ではなく、後姿などはすっきりしていて、踵の高い靴を穿いた、恰好のよい細い脚で、床をコツンコツン云わせながら鹿のように軽快に、―――粗暴と云ってもよいくらいに、―――勢よく歩くところは、妙子が話したスケート場に於ける颯爽ぶりを想像せしめるものがあった。
笑うと歯の抜けているのが分り、頸から肩へかけての肉にたるみがあって、顔にも縮緬皺が一面にあるにはあるけれども、肌が抜ける程真っ白なので、遠目ではそう云う皺やたるみがよく分らず、どうかした拍子に二十歳ぐらいは若く見えることがありそうであった。