「ほんに、あたしかて何や、そんな気イしててんけど、大人には却ってそういう言葉出てけえへん」
雪子もそう云って感心しながら、取り敢えずその花を下げたあとへ、水盤に燕子花と姫百合とを配して持って来たが、幸子はそれさえ重苦しく感じて、いっそ何もなしにして貰い、せいせいするような歌の掛軸をでもと夫に頼んで、少し季節には早いけれども、香川景樹の嶺夕立、―――夕立は愛宕の峰にかかりけり清滝河ぞ今濁るらん、の懐紙を床に掛けて貰った。
そんな病室のしつらいが幾分利き目があったのか、明くる日は余程気分が楽になったが、午後三時過ぎに玄関の呼鈴が鳴って来客らしい足音がするなと思っていると、お春が上って来て、