姉は高台寺蒔絵手文庫と書いてある箱を膝の上に載せて、固くなった桟蓋の間に無理に指を挿し込みながら、それを開けることに気を取られていて、そんな言葉など耳にも這入らない様子であった。
幸子は姉のこう云うところを見せられるのは珍しくなかった。
こう云う風に、人の云うことも聞えないくらい熱心に、寸分の隙もなく立ち働く姉を見れば、知らない者は誰でも感心して、何と云うシッカリした、甲斐々々しい主婦であろうと思うのであるが、ほんとうは、姉はそのようなシッカリ者ではないのであった。
姉は高台寺蒔絵手文庫と書いてある箱を膝の上に載せて、固くなった桟蓋の間に無理に指を挿し込みながら、それを開けることに気を取られていて、そんな言葉など耳にも這入らない様子であった。
幸子は姉のこう云うところを見せられるのは珍しくなかった。
こう云う風に、人の云うことも聞えないくらい熱心に、寸分の隙もなく立ち働く姉を見れば、知らない者は誰でも感心して、何と云うシッカリした、甲斐々々しい主婦であろうと思うのであるが、ほんとうは、姉はそのようなシッカリ者ではないのであった。