鶴子が帰って行ってから数日過ぎて、いよいよ出発の日が二三日後にさし迫った頃、亡くなった父の妹に当る人で「富永の叔母ちゃん」と呼ばれている老女が、或る日ひょっこり訪ねて来た。
幸子は、今まで一度も見えたことのない叔母が、暑い日ざかりに大阪から出て来たのには何か用件があることと察し、その用件も大凡そ分っているような気がしたが、矢張思った通り雪子と妙子の身柄に関しての問題であった。
―――つまり、今までは本家が大阪だったから、二人の妹たちが彼方此方へ往ったり来たりもよかったけれども、これからそうは行かないとすると、もともと二人は本家に属する人なのであるから、これを機会に本家と一緒に東京へ行くべきであると思う、ついては、雪子は別に支度をする必要もないことであるから、明日にも上本町へ帰って、家族と一緒に立って貰いたい、妙子の方は仕事を持っていることだから、跡始末のために多少おくれるのは仕方がないとして、一二箇月後にはこれも間違いなく引き揚げて貰いたい、尤も仕事その物を止めさせようと云うのではないから、東京へ来てからでも人形の製作に耽ることは差支えない、むしろ東京の方がああ云う仕事には便宜が多いくらいであろう。