彼女は余りにも華奢な自分の体が洋服に似合わないことを知っているので、大概な暑さにはきちんと帯を締めているのであるが、一と夏に十日ぐらいは、どうにも辛抱しきれないでこう云う身なりをする日があった。
と云っても、日中から夕方迄の間、家族の者達の前でだけで、貞之助にさえそう云う姿を見られることを厭うのであるが、それでも貞之助は、どうかした拍子に見ることがあると、今日は余程暑いんだなと、心づいた。
そして、濃い紺色のジョウゼットの下に肩胛骨の透いている、傷々しいほど痩せた、骨細な肩や腕の、ぞうっと寒気を催させる肌の色の白さを見ると、俄に汗が引っ込むような心地もして、当人は知らぬことだけれども、端の者には確かに一種の清涼剤になる眺めだとも、思い思いした。