荷物なども、蘆屋に滞留中は三人の姉妹が必要に応じて晴れ着を融通し合うことにしていたので、自分の物と云っては、着換えの羅衣や下着類が二三枚来ていただけなのであるが、それに読みさしの小説一冊を縮緬の風呂敷に小さく包んだのをお春が持って、阪急の駅まで送って来たところは、二三日の旅に出るほどにも見えない身軽さであった。
悦子も、昨日富永の叔母が見えた時はシュトルツ氏方へ遊びに行っていて、夜になってから始めて事柄を聞かされたのであったが、暫く手伝いに行くだけで直き戻って来るように話されたせいもあるかして、幸子の思っていた通り、そんなに跡を追う様子もなく済んでしまった。
出立の日は、辰雄夫婦と、十四歳を頭に六人の子供と、雪子と、九人の家族が、女中一人と子守一人を連れ、総勢十一人で、大阪駅を午後八時半発の列車に乗り込むことになった。