幸子は見送りに行くべきだけれども、自分が行けば尚更姉ちゃんが泣き出したりして見っともない光景を演じるであろうからと、わざと遠慮して、貞之助が一人で行ったが、待合室には早くから受付が出、百人近くも集った見送り人の中には先代の恩顧を受けた芸人、新町や北の新地の女将や老妓も交っていたりして、さすがに昔日の威勢はなくとも、旧い家柄を誇る一家が故郷の土地を引き払うだけのものはあった。
妙子は、とうとう逃げ廻って最後の日まで本家へ顔を出さずにいて、漸く出立の間際に駅頭へ駈けつけ、混雑に紛れて義兄にも姉にも簡単な挨拶をしただけであったが、帰りしなに、プラットフォームから改札口へ歩いて行く途中で、
「えらい失礼ですけど、あんさん蒔岡はんの娘ちゃんでっか」