この度は蒔岡君がご栄転で、―――」
関原と云うのは辰雄の大学時代の同窓で、高麗橋筋にある三菱系の某会社に勤めていた関係から、辰雄が蒔岡家へ養子に来た当座は、まだ独身で始終遊びに来、鶴子の妹達とも馴染んでいたものであったが、その後結婚し、倫敦支店勤務を命ぜられて五六年英国に滞在し、つい二三箇月前に大阪の本社へ呼び戻されたばかりの男で、妙子は彼が最近帰朝した噂は聞いていたけれども、会うのは矢張八九年ぶりであった。
「僕さっきからこいさんに気がついていたんですが、―――」
この度は蒔岡君がご栄転で、―――」
関原と云うのは辰雄の大学時代の同窓で、高麗橋筋にある三菱系の某会社に勤めていた関係から、辰雄が蒔岡家へ養子に来た当座は、まだ独身で始終遊びに来、鶴子の妹達とも馴染んでいたものであったが、その後結婚し、倫敦支店勤務を命ぜられて五六年英国に滞在し、つい二三箇月前に大阪の本社へ呼び戻されたばかりの男で、妙子は彼が最近帰朝した噂は聞いていたけれども、会うのは矢張八九年ぶりであった。
「僕さっきからこいさんに気がついていたんですが、―――」