雪子がいなくなってからは、お春が悦子の寝台の下に寝床を敷いて寝るように極めてあったが、半月ばかり立つと、悦子はお春を嫌い出してお花に代らせ、又半月ばかり立つと、お花を嫌い出して下働きのお秋に代らせた。
悦子が子供に似合わず寝つきが悪く、寝入る前に二三十分興奮しておしゃべりをする癖があることは前に書いたが、女中達だとこの二三十分間の相手が勤まらず、いつも悦子より先に眠ってしまうのが、彼女を苛立たせる原因であるらしく、苛立てば苛立つほど尚寝られなくなって、夜中に荒々しく廊下を駈けて来て、両親の寝室の襖をばたッと開けて、
「お母ちゃん、悦子ちょっとも寝られへんねん」