と、或る時貞之助は、悦子がお花と飯事遊びをするのに、注射の針の使いふるしたのを持って来て、芯が藁で出来ている西洋人形の腕に注射しているのを、ふっと見かけたことがあった。
そして、何と云う不健康な厭な遊戯をしていることかと思い、これなども例の衛生教育の余毒であると感じて、それからは一層、何とかして是正しなければいけないと云うことを始終考えていたのであった。
ただ、肝腎の悦子が誰よりも雪子の云うことを信じるようになっており、その雪子の遣り方を妻が支持しているのでは、下手な干渉をすると家庭に風波を起すだけで終ってしまう危険があるので、機会を待っていたのであるが、雪子がいなくなったことは、そう云う点からよいことであるように貞之助は見ていた。