十一月になって、貞之助は仕事のことで二三日東京へ行く用が出来たので、始めて渋谷の本家を訪ねたが、子供達はもうすっかり新しい生活に馴れ、東京弁も上手になり、家庭と学校とで言葉の使い分けをする程になっていて、辰雄夫婦も雪子も機嫌よくしてい、狭い所で窮屈だけれども是非泊って行ってくれろと、皆がすすめるのであった。
しかし全く狭い家なので、貞之助は築地の方に宿を取って、義理に一晩だけ泊ったが、その明くる朝、辰雄や上の子供達が出かけてしまい、雪子が二階を片づけに行っている隙に、
「雪子ちゃんも落ち着いてるようで、ええ塩梅ですな」