ましてこれは誰のためでもない、此方の妹のためであって、陣場夫婦は親切ずくでしているだけのことなのだから、向うにすれば、姉が妹の見合いのために体の故障を忍ぶぐらいが何であろう、それを自分達に恩にでも着せるように云うのはお門違いである、と思っているのであろうか。
貞之助は、此方の僻みかも知れないけれども、この夫婦にも矢張井谷と同じような考、―――婚期におくれて困っている娘を自分達が世話をしてやるのだ、と云った考があって、彼等こそそれを恩に着せる気味合があるのではなかろうか、と云う風にも感じた。
が、幸子の話だと、陣場と云う男は浜田丈吉が社長をしている関西電車の電力課長であると云うから、社長に忠義立てをするために野村の意を迎えようとして一生懸命になり過ぎ、つい外の事に気が廻らなくなっているのだと解釈するのが、一番当っているかも知れない。