………さっき電話かけた時は、分りました、確かに日本間取って置きます云うてんけど、何せ、ここのうちはボーイが支那人ばかりでっしゃろ、そやさかいに、何遍も念押したことは押したけど、やっぱり此方の云うことがあんじょう通じてえへなんでんわ。
貞之助はこの二階へ上った時から、廊下に面した支那間が用意してあるのを見て、変に思っていたのであるが、ボーイの聞き違いだとすれば強ち夫人を責める訳には行かないようなものの、電話に出たのがそんな頼りない支那人のボーイであったのなら、何とかその上にも念の入れ方があったろうものを、畢竟幸子に対する労わりの心が足りないところから起ったのであるとしか思えなかった。
それに夫の陣場にしても、野村にしても、約束が違ったことについては何の弁解もしないで、頻りにこの場所の眺望を褒めてばかりいるのである。