「そんでも、あの人やったら、何でもあたしの云う通りになりやはるやろうし、好きなことして暮せるとは思うねんわ」
と、ぽつりとそんな言葉を洩らした。
幸子は、「好きなことして暮せる」と云う雪子の意味は、聞かずとも分っていることで、つまり、いつでも来たいと思う時に蘆屋へ遊びに来さして貰いたいのであろう、普通の所へ嫁に行ったのではなかなかそうは出来にくいが、あのお爺さんならそのくらいな我が儘をしても大丈夫らしいから、そう云う慰安だけはある、と云うのであろう、そんな考で結婚されたのでは貰う方が遣り切れないであろうが、あのお爺さんの様子ではそれでも構わないから来て下さいと云うかも知れない、まあ行ってしまえばそうそう出て来られるものでもないし、雪子ちゃんのことだから、口ほどにもなくあのお爺さんの情愛に絆されて、此方のことなんぞ直きに忘れてしまうかも知れず、そのうちに子供でも出来るようになれば尚更である、婚期におくれて困っている妹をそれほどに懇望してくれるのは、考えように依っては有難いことで、頭から嫌ったりなどしては勿体ないようでもある、と云った風にも思えたので、