尤も東京の姉からは、まだいつ帰れとも云って来ている訳ではないが、彼女が内心、今日は云って来るか、明日は云って来るかとビクビクしながら、一日でも多くの時を此方で過したいと願っている様子は、余所眼にもよく分っていた。
幸子はこの内気な妹が、見かけに依らず出好きなことを知っているので、自分が出歩けるようになったら、映画やお茶の附合いぐらいは毎日でもしてやるのだがと思っていたのであるが、雪子はそれを待ち切れないで、この間から天気の好い日には妙子を誘って神戸へ出かけて行き、何と云うことなしに元町あたりをぶらついて帰って来ないと、気が済まないらしかった。
そして、いつでも、松濤アパートの妙子を電話へ呼び出して、落ち合う先を打ち合せてから、いそいそと出かけて行くのがさも楽しそうで、縁談のことなど全く念頭にないようであった。