父は十数枚の拓本の中から、出来のいゝのをあれかこれかと四五枚選び出して、一枚々々熱心に、何時間でも飽かず眺めて暮している、又興奮させてはと思ったが、それをも禁止する訳に行かず、颯子に直接触れるよりは、まあこんなことで満足させて置く方がいゝと考えてそのまゝにしている、と看護婦は云った。
四月中旬になってから、好天気の日には庭を二三十分ぐらい散歩するようになった。
大概看護婦がお供をしたが、稀には颯子が手を曳いていることもあった。
父は十数枚の拓本の中から、出来のいゝのをあれかこれかと四五枚選び出して、一枚々々熱心に、何時間でも飽かず眺めて暮している、又興奮させてはと思ったが、それをも禁止する訳に行かず、颯子に直接触れるよりは、まあこんなことで満足させて置く方がいゝと考えてそのまゝにしている、と看護婦は云った。
四月中旬になってから、好天気の日には庭を二三十分ぐらい散歩するようになった。
大概看護婦がお供をしたが、稀には颯子が手を曳いていることもあった。