私は関田町の家で、夫や敏子のいない所であの人に会ってはいるけれども、いつも最も肝要な瞬間、―――肌と肌とを擦り着けて相抱き合う時になると、たわいなく泥酔してしまうのである。
かつて一月三十日の日記に書いたこと、「私が幻覚で見たものは、果して実際の木村さんなのであろうか」という疑問、また三月十九日の条に書いたこと、「木村さんかと思うと夫であったり、夫かと思うと木村さんであったりするあの裸体を、一度夫に邪魔されない時に、この眼で見届けてみたい」という好奇心が、いまだに満たされないままに胸にわだかまっていたのである。
私はぜひとも夫というミディアムを中に入れないところの、これこそ正しく生身の木村さんに違いないという人を、半意識状態でない時に、青白い蛍光燈の下ではなく、真っ昼間のあかりの下でしみじみと眺めてみたかったのである。