隙を見せれば即座に切り返して来るのである)間もなく私は夫が私のベッドの方へ上って来、うしろから私を抱きすくめて耳の裏側へ激しい接吻をつづけざまに注ぐのを、眼をつぶったまま許していた。
………私はそんな工合にして、今ではどんな意味ででも愛しているとは云い得ないこの「夫」という人に、自分の耳朶をいじくらせることを、決して不愉快には感じなかった。
木村に比べると、何という不器用な接吻の仕方であろうと思いながら、この「夫」の変にくすぐったい舌の感触を、そう一概に気味悪くは感ぜずに、―――まあ云ってみれば、その気味の悪いところにもおのずから一種の甘みがあるという風に思いながら、味わうことができたのであった。