夫は本年一月一日の記において、私のことを「生レツキ陰性デ、秘密ヲ好ム癖ガアル」と云い、「知ッテイルヿデモ知ラナイ風ヲ装イ、心ニアルヿヲ容易ニ口ニ出サナイ」性質の女であると云っているが、これはたしかにその通りであることを否定しない。
概括的に云えば、私よりも彼の方が何層倍か人間が正直にできており、従ってその記すところにも虚偽が少いことは認めざるを得ないけれども、そう云っても彼の言葉にも、全く譃がないというわけでもない。
たとえば「妻ハコノ日記帳ガ書斎ノドコノ抽出ニハイッテイルカヲ知ッテイルニ違イナイ」けれども、「マサカ夫ノ日記帳ヲ盗ミ読ムヨウナヿハシソウモナイ」と云ったり、「シカシ必ズシモソウトハ限ラナイ理由モアル」が、「今年カラハソレヲ恐レヌヿニシタ」と云ったりしているが、実はその後段において告白している通り、「ムシロ内々読マレルヿヲ覚悟シ、期待シテイタ」というのが本心であったことを、私は夙に見破っていた。