私は彼が「その日記帳をあの小机の抽出に入れて鍵をかけていることも、そしてその鍵を時としては書棚のいろいろな書物の間に、時としては床の絨緞の下に隠していることも、とうの昔から知ってい」たのであり、決して「日記帳の中を開けて見たりなんかしたことはない」どころではない。
ただ今までは、われわれ夫婦の性生活につながりのある問題はあまり扱われていたことがなく、私には無味乾燥な学問的な事柄が多かったところから、めったに身を入れて見たことはなかった。
時折ぱらぱらとページをめくってみる程度で、わずかに「夫のものを盗み読んでいる」ということだけに、或る満足を覚えていたに過ぎなかったのであるが、彼がそのことを記すことを「恐レヌヿニシタ」今年の正月一日の記から、私は当然の結果として彼の記述に惹き付けられた。