「僕ハ彼女ト直接閨房ノヿヲ語リ合ウ機会ヲ与エラレナイ不満ニ堪エカネテコレヲ書ク」と云い、私の「アマリナ秘密主義」、私のいわゆる「身嗜ミ」、「アノ偽善的ナ『女ラシサ』」、「アノワザトラシイオ上品趣味」に反感を抱き、それを打破してやりたいために「コウイウヿヲ書ク気ニナッタ」と云っているのは、果してそれだけが理由だったのであろうか。
恐らくは他に重大な原因もあったことと思われるけれども、日記は不思議にもそのことについて明瞭には記すところがない。
あるいは彼自身も、ああいう日記を書きたくなった心の経過、その由って来るところを理解していなかったのかも知れない。