彼女ニソウイウ自覚ヲ与ユルヿハ、少クトモ僕自身ノタメニ不利カモ知レナイ」にもかかわらず、彼があえてその不利を冒す気になったのはなぜであろうか。
彼は私のその「長所ヲ考エタダケデモ嫉妬ヲ感」じ、「モシモ僕以外ノ男性ガ彼女ノアノ長所ヲ知ッタナラバ、………ドンナヿガ起ルデアロウカ」不安であると云っているが、その不安をことさら隠すところなく日記に書き記すということは、ひょっとすると、私にそれを盗み読んで貰い、そうして彼を嫉妬せしめるような行動を示して貰うことを、期待しているのではあるまいかという風に、私は取った。
この推測が当っていたことは、「僕ハソノ嫉妬ヲ密カニ享楽シツツアッタ」、―――「僕ハ嫉妬ヲ感ジルトアノ方ノ衝動ガ起ル」、―――「ダカラ嫉妬ハ或ル意味ニオイテ必要デモアリ快感デモアル」(一月十三日)―――等々とあるので明らかであるが、もうそのことは一月一日の日記の中でうすうす私には想像できたのであった。