「彼女ノ性質カラ推シテ、果シテホントウニ睡ッテイタノカ寝タフリヲシテイタノカ、ソノ点ハ疑ワシイ」と夫が書いているあの二日間、私は決して「寝タフリヲシテイタ」のではないが、そうかといって完全に意識を失いつづけていたとは云いがたい。
あの時の半睡半醒の状態は、大体あの折の日記に書いた通りであるが、「彼女ノ口カラ『木村サン』トイウ一語ガ譫語ノヨウニ洩レタ」ことについては、多少書き添える必要があろう。
あれは「ホントウノ譫語ダッタノカ、譫語ノゴトク見セカケテ故意ニ僕ニ聞カセタノデアルカ」どちらであるかといえば、その中間ぐらいであったといえよう。